粒子径解析装置は、産業用途 で広く使用されています。この記事では、粒子分析装置の選択に影響を与える重要なトピックを取り上げています。測定手法の詳細については、動的光散乱法 (DLS) の原理、レーザー回折・散乱法による粒子径測定、SAXSによるナノ構造解析 をご覧ください。
粒子分析装置の選択方法
粒子特性の評価手法
以下のような手法から選択できます。
- レーザー回折・散乱法 (LD)
- 動的光散乱法 (DLS)
- 一部の電子顕微鏡法
- HPLCやGPCなどの分離法
- 小角X線散乱法 (SAXS)
以下の節では、レーザー回折・散乱法、動的光散乱法、走査型電子顕微鏡 (SEM)、透過型電子顕微鏡 (TEM) を中心に説明します。小角X線散乱 (SAXS) の基本原理については、"SAXSナノ構造解析" をご覧ください。
粒子径はどのくらいか?
大きな粒子と小さな粒子の分析手法に関して、右の表に、広く使用されている手法の一般的な守備範囲を示しています。数マイクロメートルから数ミリメートルまでの大きな粒子には、レーザー回折・散乱法 (LD) が適しています。LDは、乾燥粉末または分散液を分析し、迅速で再現性が高く、マイクロメートル領域の粒子径の測定に定評があります。
ナノメートルから数マイクロメートルまでの粒子には、動的光散乱法 (DLS) が適しています。迅速で簡便に測定でき、再現性が高く、さまざまな溶媒中の粒子を測定できます。多くのDLS装置は、粒子の ゼータ電位 や分子量の評価にも使用できます。
また、TEM (透過型電子顕微鏡) やSEM (走査型電子顕微鏡) なども、粒子の写真を撮影することで粒子の大きさを測るのに使用できます。これらは正確で有用な手法ですが、特に非球形粒子の場合は、コストと時間がかかります。
他にどのようなパラメーターが必要か?
粒子径の他にも、分析装置で測定できる粒子パラメーター にはさまざまなものがあります。それらは以下の通りです。
- 粒子形状
- 電荷
- 濃度
- 密度
- 分子量
- 濁度
- 個数
- 空隙率
- 安定性
多くの場合、1 台の装置でこれらのパラメーターのうちのいくつかをまとめて測定できます。例えば、ナノ粒子の粒子径、ゼータ電位、分子量を併せて測定できる装置は多数あります。しかし、粒子の計数、粒子形状の評価、あるいは粒子混合物の分離には、他の装置が必要な場合もあります。
どのような種類のサンプルか?
レーザー回折・散乱法などの手法は、柔軟性が高く、乾燥粉末、分散液、さらにはエアロゾル中の粒子を分析することができます。一方、DLS (動的光散乱法) などの手法は、サンプルを水系溶媒や有機溶媒に分散させる必要があります。分散液の場合は粒子の濃度が重要です。濃度が高すぎると (40 %w/v~50 %w/v 以上)、DLSなどの一部の手法では良好なデータを得ることが難しく、電気音響法などの方が有用な場合があります。
使用可能なサンプル量はどの程度か?
サンプルの種類に関するもう一つの問題として、使用可能なサンプルの量が挙げられます。サンプルがリットル単位で準備できる場合は、サンプル量はほぼすべての種類の装置で問題になりません。しかし、組み換えタンパク質や抗体などの一部のサンプルは、製造コストが非常に高いため、かなり少量しか製造できません。どのような手法が使用可能かを判断するには、使用可能なサンプル量を知ることが重要です。DLS装置などの多くの粒子分析装置は、数10マイクロリットルの溶媒で測定可能であり、多くの場合、こうした少量サンプルの測定用に特別な小容量キュベットが用意されています。
サンプルの安定性はどの程度か?
これは、特にタンパク質サンプルのゼータ電位分析と関係があります。ゼータ電位は、対象となるサンプルに電圧をかけ、粒子の泳動速度を測定することで求められます。泳動速度とゼータ電位あるいは有効電荷との間に相関があります。この電圧が大きすぎたり、長時間印加しすぎたりすると、タンパク質や核酸のサンプルが損傷を受け、変性することがあります。この問題は、新たに開発された ゼータ電位測定手法 により測定時間が大幅に短縮し、低電圧での測定が実現したことにより解消されました。さらに、逆オメガ型の毛細管がある新設計のキュベット (オメガキュベット) は、従来のU字型キュベットと比較して、タンパク質の変性を抑制するのに有効です。
安定性は、粒子やタンパク質の凝集の観点からも重要です。粒子が経時的に凝集すると、分散液中で沈降が発生して有効な分析が実施できなくなる、あるいは単純に、時間や条件によって異なる結果になる可能性があります。
データのアクセシビリティ
データのアクセシビリティに関しては、さまざまな選択肢があります。生データへのアクセスが可能なシステムもあれば、既存の報告書雛型のみに限定するシステムもあります。
コンプライアンス
GMPやFDAの規制対象の環境では、21 CFR Part 11に準拠した装置用ソフトウェアを使用し、コンプライアンス関連の必要書類やIQ/OQプロトコルが実装されている必要があります。
結果の再現性と真度
同じサンプルであっても、測定手法によって結果が微妙に異なる場合があります。例えば、TEMの結果は乾燥した粒子の個数解析に基づいており、水中粒子の強度解析に基づくことが多いDLSの結果よりも値が小さくなる傾向があります。
詳細情報
測定手法の詳細については、こちらをご覧ください。