粒子径分布
粒子径は、粒子状物質の最も重要な特性のひとつです。加工時の鉱物の選出しやすさ、医薬品の吸収速度、食品の口当たりなど、多くの特性に直接影響を与えます。産業界で粒子径を測定する目的は、何よりもまず、粒子径分布と目的の特性 (口当たり、反応性、バイオアベイラビリティ、焼結挙動など) との間の相関を調べることです。相関に関する情報は、(粒子径が影響を受ける) 製造工程を変更する際に使用し、最終的には品質管理の指標として使用することができます。
最新の測定装置では、粒子径分布測定は簡単で単純な作業となり、多くの場合、測定は 1 分以内に行うことができます。測定手法は多種多様で、平均径、モード径など、さまざまな結果を得ることができます。その結果を理解するには、まずこれらのパラメータの意味を知ることが重要です。
この記事では、粒子径分析における基本的な用語とその使用方法を紹介し、粒子径分布の特性評価に単一パラメータと複数パラメータを使用する場合の長所と短所について説明します。
単一パラメータによる粒子径分布の記述
1 つまたは 2 つのパラメータのみを使用して、異なる粒子径や分布形状が多く含まれている粒子系について有意義な記述をすることは困難です。有用な情報を得るには、計算が簡単で、十分に具体的で、対象となる物質の特性に直接関連するパラメータを選択する必要があります。
測定手法が異なれば、粒子の「見え方」も異なり、重み付け基準も異なってきます。粒子径分布の分析に使用される主な重み付け基準は以下のとおりです。
- 個数基準の分布 (個数の比率)
- 表面積基準の分布 (表面積の比率)
- 体積基準の分布 (体積の比率)
例えば、顕微鏡は個々の粒子の直径を見るため、この手法では個数基準の分布となります。一方、光の回折は粒子の体積に比例するため、レーザ回折・散乱法や X 線回折法などの手法では、体積基準の分布が得られます。
図 1 は、1 μm、2 μm、3 μm の粒子を含む混合物の粒子径分布 (PSD) が、各基準でどのように見えるかを示した例です。これらの基準の主な違いは、大きい粒子と小さい粒子を比較する場合の表示方法にあります。個数基準では、小さい粒子も大きい粒子も同じように表示されます。一方、体積基準の分布では、少数の大きな粒子が多数の小さな粒子の比率を上回る可能性があります。
どちらの表示方法も、測定に何を求めるかによってそれぞれ利点があります。鉱業関係者にとっては、一定の体積に含まれる粒子の大きさを知ることが重要であり、個々の細胞を数える微生物学では、個数基準の分布が好まれます。触媒を扱う作業者は、触媒の活性が反応物との接触面積に依存するため、おそらく面積基準の分布を選択するはずです。
また、粒子径測定手法の違いにより、以下の表1に示すように、各手法固有の重み付け基準を持つ結果が得られます。
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個数基準の分布 |
顕微鏡法、動的画像解析法 表面積基準の分布 |
ガス吸着法 体積基準の分布 |
沈降法、レーザ回折・散乱法、X 線回折法 散乱光強度基準の分布 |
動的光散乱法 (DLS) |
|---|
散乱光強度基準の分布は、動的光散乱 (DLS) 法に特有のものです。この分布は、粒子による散乱光の強度揺らぎの尺度として表わされます。体積基準の分布よりも、大きな粒子にさらに大きく重み付けすると考えられるため、DLS による粒子径分布はレーザ回折・散乱法の分布よりもさらに大きな粒子に偏ることになります。
この記事の残りの部分では、レーザ回折・散乱法による測定を例に、粒子径分布の可視化、解析、比較の選択肢について見ていきます。
レーザ回折・散乱法による品質管理用の単一パラメータの取得
3) と、図 3 に示す累積分布 (Q3) が最も一般的な表示方法です。前者は、母集団の中で直径 d の粒子が見つかる確率を示し、後者は、直径dよりも小さい (ふるい下) または大きい (ふるい上) 粒子の比率を示しています。累積分布は頻度分布の積分であるため、この 2 つには数学的に強い相関関係があります。$$Q_3(r)=\int_{0}^{r} q_3(r) dr$$
分布図は、一目で多くの情報が得られるため実用的です。分布の多峰性、粒子径区間ごとの相対比率、広がり、全体の分布形状以外にも、多くの情報を確認できます。視覚的な情報は迅速かつ便利ですが、記録や比較を行うには数値が不可欠です。単一のパラメータで粒子径分布を記述する場合、最も重要な選択肢は以下の3つです。
- モード径 (最頻径)
- メディアン径
- 平均径
モード径 (最頻径)
モード径とは、最も頻度が高い粒子径のことです。これは、頻度分布曲線上のピークの位置に相当します。モード径は、ラテックスビーズのように厳密に単峰性で分布幅の狭いサンプルや、単分散 (粒子径が非常に近い粒子のみを含む) のナノ粒子の場合には分かりやすい指標です。しかし、サンプルが二峰性または多峰性であったり、多分散サンプルの特性を評価する場合は、限界を迎えます。図 3 は、3 つのサンプルの粒子径分布が明らかに異なるにもかかわらず、すべてのサンプルのモード径が非常に類似している例を示しています。
メディアン径
メディアン径とは、データの上位半分と下位半分を分ける値のことです。粒子全体の半分がこれよりも小さく、残り半分がこれよりも大きくなるように定めた粒子径です。メディアン径は D50 とも呼ばれます (図 2 を参照)。メディアン径は累積分布曲線から簡単に求めることができます ( 図 4 を参照)。しかし、モード径と同じく、分布が異なるにもかかわらずメディアン径が同じになる可能性があるため、単一の値として信頼できるものではありません。
平均径
ISO 9276-2 によると [1]、モーメント比表記法に従った平均粒子径の一般的な定義は以下のとおりです。
$$\bar{D}_{[p,q]}=(\frac{\sum n_iD_i^p}{\sum n_iD_i^q})^{1/(p-q)} $$, if $$p\neq\ q$$
ここで、ni は平均 Di 径を持つ粒子径区間 i の粒子の頻度です。
レーザ回折・散乱法でよく使われる直径は以下のとおりです (表 2)。
| 平均径の名称 | モーメント比表記法 | 計算式 | 主な用途 |
| 個数基準平均径 | D[1,0] | $$D_{[1,0]}=\frac{\sum n_iD_i}{\sum n_i} $$ | 生物学的用途:ウイルス、血球計数 レーザ回折・散乱法と光学的手法 (例: 顕微鏡法) との結果の比較。 |
| 面積基準 (Sauter) 平均径 | D[3,2] | $$D_{[3,2]}=\frac{\sum n_iD_i^3}{\sum n_iD_i^2} $$ | 流体力学、触媒、燃料燃焼 |
| 体積基準 (De Brouckere) 平均径 | D[4,3] | $$D_{[4,3]}=\frac{\sum n_iD_i^4}{\sum n_iD_i^3} $$ | 鉱業、粉砕、鉱物加工、建築材料 |
| 体積基準の平均表面積 | D[5,3] | $$D_{[5,3]}=(\frac{\sum n_iD_i^5}{\sum n_iD_i^3})^{1/2} $$ | エマルション科学、特に牛乳の均質化効率を記述する場合。 Walstra によれば (D5,3 )2 は「クリーミングパラメータ」とも呼ばれます [2]。 |
その他の手法
さらに、20世紀中に、鉱業、製粉業、研削業における製品の品質検査に対して単一の基準を設けるために、いくつかの手法が開発されました。その代表的なものが、Rosin-Rammler (RR) 法と Gates-Gaudin-Schuchmann (GGS) 法です。これらはいずれも対数計算によって分布を線形化するもので、より感度の高いメディアン径 (D63.5) が得られます。
複数パラメータによる粒子径分布の記述
単一のパラメータは、製造バッチの違いを確認する場合など、品質管理において貴重な情報となります。しかし、単一のパラメータでは、分布形状、分布幅、多峰性など、偏差の原因に関する情報は得られません。偏差の原因をより詳しく調べ、理解するには、粒子径分布を複数のパラメータで記述する必要があります。粒子径測定では以下のパラメータを使用します。
D 値
x のように数字が続いて初めて意味を持ちます。D 値は、ふるい下とふるい上の両方を定義できます (累積曲線がふるい下とふるい上になるのと同様です)。特に明記されていない限り、標準はふるい下 D 値であり、一般的に Dx はこれよりも直径が小さい粒子が x % ある直径を示します。最もよく使用される D 値は D10、D50、D90 ですが (図 2 を参照)、特定の用途 (例: 静脈注射用インスリン) に合わせて D 値をカスタマイズすることもできます。D 値は、その利便性と定義の分かりやすさから最も多用されるパラメータですが、単一のパラメータでありながら計算量の多い RR (Rosin-Rammler) 法や GGS (Gates-Gaudin-Schuchmann) 法に代わるものとして、通常は品質管理目的で使用します。
スパン
ただし、特定の用途に対して独自に定義されたスパンも存在します。
Folk & Ward パラメータ
土壌サンプルや地質学サンプルなどは、粒子径が幅広く、粒子径に応じて分類を行います。粒子径分布は、多くの場合、非常に広くて複雑な、多峰性の分布になります。 このようなサンプルの分析のために、FolkとWard (F&W) が統計学的粒子径分布解析法を提示しました [Ref: (R.L. Folk, 1957), AR: Soil]。
この手法のポイントは、次式によって粒子径分布をミリメートルからファイスケールに変換することです。
$$ \phi = -\log_{2}d $$
続いて、一連のパラメータの計算を行います。
- メディアン径: 上記参照。ファイ単位で測定
- 平均径: 上記参照、ただし Folk は独自の式を提示しています (R.L. Folk, 1957)。
$$ M_z = \frac{\phi_{16} + \phi_{50} + \phi_{84}}{3} $$ 平均径もファイ単位で表示し、またあらゆるパラメータの中で最も広く使用されています。 - 歪度:分布のピーク付近の非対称性を表す指標。次式で求めます。
$$ sk_1 = \frac{\phi_{16} + \phi_{84} - 2\phi_{50}}{2(\phi_{84} - \phi_{16})} + \frac{\phi_{5} + \phi_{95}-2\phi_{50}}{2(\phi_{95}-\phi_{5})} $$ 歪度もファイ単位で表示します。歪度の計算方法は他にもあります。ただし、Folkが提示した式は分布の裾も考慮したものになっています。完全に対称な分布の歪度は0.00です。正の歪みは小さい粒子の増加 (左の裾) を、負の歪みは大きい粒子へのシフト (右の裾) を表しています。Folk は分類方法も提示しました。- ±0.1 はほぼ対称
- -0.10~-0.30 は粗い方への歪み、+0.1~+0.3 は細かい方への歪み
- -0.30~-1.00 は粗い方への大きな歪み、+0.3~+1.0 は細かい方への大きな歪み
-
尖度:正規 (ガウス) 分布からのずれ、つまり「尖り具合」を表す指標。Folk が提示した式は以下のとおりです。
$$ k_g=\frac{\phi_{95} - \phi_{5}}{2.44(\phi_{75}-\phi_{25})} $$ 尖度もファイ単位で表示します。これは、サンプルに含まれる外れ値の数を判断するのにも使用できます。完全な正規分布は、尖度が 1.00 で、mesokurtic とも呼ばれます。分布のピークがより尖っている場合、つまり外れ値が少ない場合、尖度は 1.00 よりも高く、leptokurtic と呼ばれます。分布のピークがより平らな場合、つまりサンプルに多くの外れ値が存在する場合、尖度は 1.00 より小さくなります。このような分布は platykurtic と呼ばれます。
さらに、ファイ単位には、巨礫 (ϕ > -8) から粘土 (ϕ < 8) までの土壌分類について、粒子径区間を分かりやすく表せるという利点もあります。
結論
粒子径分析は、研究開発だけでなく、品質管理にも有用です。適切な測定方法、重み付け基準、モード径、その他のパラメータを注意深く慎重に選択することで、物質の持つ特性に関する重要な情報が得られます。
特定のサンプルに対する粒子径分布測定の重要性については、以下をご覧ください。
粒子径測定手法の詳細については、以下をご覧ください。
参考文献
[1] I. 9276-2:2014. 2014. "Representation of Results of Particle Size Analysis — Part 2: Calculation of Average Particle Sizes/Diameters and Moments from Particle Size Distributions."
[2] Walstra, P., and H. Oortwijn. 1975. "Effect of Globule Size and Concentration on Creaming in Pasteurized Milk." Netherlands Milk and Dairy Journal, vol. 29: 263–278.
[3] Folk, R. L., and W. C. Ward. 1957. "Brazos River Bar: A Study in the Significance of Grain Size Parameters." Journal of Sedimentary Petrology, vol. 27: 3–26.
[4] Typical results of a particle size analysis by laser diffraction (CC BY license)