12 Rates

粒子径分布

粒子径は、粒子状物質の最も重要な特性のひとつです。粒子径は、加工時の鉱物の選出しやすさから、多くの食品の口当たりまで、さまざまな特性に直接影響しています。産業界において、粒子径測定の目的は、まず粒子径と対象の特性 (例: 口当たり、反応性、焼結挙動) との相関関係を見つけることです。次にこの情報を利用して、粒子径を介して物質の特性を変更したり、品質保証のパラメーターとしても粒子径を使用することができます。

今日、物質の粒子径分布の測定は、最新の装置により簡単な作業となりました。多くの場合、測定は 1 分以内に行うことができます。粒子径を測定するには、さまざまな手法があり、平均径やモード径などのパラメーターといった形で、いずれも多くの結果を得ることができます。その結果を理解するには、まずこれらのパラメーターの意味を知ることが重要です。この記事では、粒子径解析における基本的な用語とその使用方法を紹介し、粒子径分布の評価に単一のパラメーターと複数のパラメーターを使用する場合のメリットとデメリットについて解説します。

単一のパラメーターによる粒子径分布の記述

Figure 1: Theoretical particle size distribution of a simple mixture in different weightings

1 つまたは 2 つのパラメーターのみを使用して、異なる粒子径や形状が多く含まれている粒子系について有意義な説明をすることは困難です。有用な情報を得るには、計算が容易で、十分に特有の値を持ち、対象となる物理的特性に直接関連するパラメーターを選択する必要があります。

分析手法によって粒子の "見え方" も異なり、重み付けも異なります。重み付けの種類は次の通りです。 

  • 個数基準の分布
  • 散乱強度基準の分布
  • 体積基準の分布

例えば、顕微鏡では各粒子の直径を見るため、結果として得られる分布は個数基準の分布となります。これに対し、光の回折は粒子の体積に比例するため、レーザー回折やX線回折などの手法では体積基準の結果が得られます。

図 1 は、1 µm、2 µm、3 µm の粒子を含む混合物の粒子径分布が、それぞれの重み付けによってどのように見えるかを示しています。

表 1: 各測定手法で得られた粒子径分布
重み付け 測定方法
個数基準の分布 顕微鏡法、動的画像解析法
散乱強度基準の分布 動的光散乱法 (DLS)
体積基準の分布 沈降法、レーザー回折・散乱法、X線回折法

図 1 に示すように、これらの重み付けの主な違いは、粗い粒子径区間に対する細かい粒子径区間の表示方法です。個数基準では、小さい粒子も大きい粒子も同じように表示されます。一方、体積基準の結果では、少数の大きな粒子が多数の小さな粒子を上回る可能性があります。どちらの表示にも利点があり、測定に何が求められるかによって異なります。鉱業に従事する人にとっては、一定の体積に含まれる粒子の大きさを知ることが重要です。一方、個々の細胞を数える微生物学では、個数基準の分布が好まれます。

この記事の残りの部分では、レーザー回折・散乱法 を用いた測定例を示しながら、粒子径分布の可視化、解析、比較に用いる機能について見ていきます。

レーザー回折・散乱法による品質管理用の単一パラメーターの取得

Figure 2: Typical results of a particle size analysis by laser diffraction. CC BY license

レーザー回折・散乱法では、図2に示す頻度分布 (q3) と、図3に示す累積分布 (Q3) の 2 つが最も一般的な表現方法です。前者は、母集団の中で直径 d の粒子が見つかる確率を示し、後者は、直径 d よりも小さい (ふるい下) または大きい (ふるい上) 粒子の比率を示しています。累積分布は頻度分布の積分であるため、この2つは数学的に強い相関関係があります。

$$Q_3(r)=\int_{0}^{r} q_3(r) dr$$

グラフィック表示は、一目で多くの情報が得られるため実用的です。例えば、多峰性、粒子径区間ごとの相対比率、広がり、分布の一般的な形状などが挙げられます。視覚的な情報は迅速かつ便利ですが、記録や比較のためには数値が不可欠です。単一のパラメーターで粒子径分布を記述する場合、最も重要な選択肢は次の 3 つです。

  • モード径 (最頻径)
  • メディアン径 (中央径)
  • 平均径

モード径 (最頻径)

モード径 (最頻径) とは、最も頻度が高い粒子径と定義されます。これは、頻度分布曲線上のピークの位置です。この頻度分布曲線は、ラテックスビーズのように厳密に単峰性で幅の狭いサンプルや、単分散 (粒子径が非常に近い粒子のみを含む) のナノ粒子の場合には分かりやすい図となります。しかし、サンプルが二峰性または多峰性であったり、多分散サンプルの特性を評価する場合は、その限界が明らかになります。図2は、3つのサンプルの粒子径分布が明らかに異なるにもかかわらず、すべてのサンプルの最頻値が非常に類似している例を示しています。

Figure 3: Three different samples with the same mode, but clearly different particle size distributions

メディアン径 (中央径)

メディアン径 (中央径) とは、データの上位半分と下位半分を分ける値のことです。粒子全体の半分がこれよりも小さく、残り半分がこれよりも大きくなるように定めた粒子径です。メディアン径 (中央径) は D50とも呼ばれます (図1を参照)。メディアン径 (中央径) は累積分布曲線から簡単に求まります ( 図4を参照)。しかし、モード径 (最頻径) と同じく、複数の分布でメディアン径 (中央径) が同じになる可能性があるため、単一の値としては信頼できるものではありません。

Figure 4: Determination of the median from the cumulative curve

平均径

平均径は、単一の指標としては最も有益なものです。加重平均に基づいて、さまざまな平均径が定義されています。最も重要な平均直径は次の 3 つです。

  1. 個数基準の平均直径
  2. 表面積基準の平均直径
  3. 体積基準の平均直径

これらの平均直径の計算は一般式に従います:

$$D[p,q]=\frac{\sum n*d^p}{\sum n*d^q} $$

上述の通り、用途によって注目するサンプル特性は異なるため、これらの平均直径はどれも等しく重要です。表 2 は、これらの平均径をまとめたもので、用途の例も示しています。

表 2 : 加重平均直径とその用途
平均直径 重要性
個数基準の平均径 D[1,0] 生物学的用途、ウイルス、血液細胞の計数
表面積基準の (Sauter) 平均径 D[3,2] 流体力学、触媒[アプリケーションレポート]、燃料燃焼
体積基準の (De Brouckere) 平均径 D[4,3] 採掘、粉砕、鉱物加工[アプリケーションレポート]

その他の手法

さらに、20世紀には、鉱業、製粉業、研削業における製品の品質検査に対して単一の基準を設けるために、いくつかの手法が開発されました。その代表的なものが、Rosin-Rammler (RR) 法とGates-Gaudin-Schuchmann (GGS) 法です。これらはいずれも対数計算によって分布を線形化し、より感度の高い中央値 (D63.5) が得られます。 

複数のパラメーターによる粒子径分布の記述

単一のパラメーターは、製造バッチの違いを確認する場合など、品質管理において貴重な情報となります。しかし、単一のパラメーターでは、形状、幅、多峰性など、偏差の原因に関する情報は得られません。偏差の原因をより詳しく調べ、理解するには、粒子径分布を複数のパラメーターで記述する必要があります。粒子径測定手法では、以下のパラメーターが使用されます。

D値

いくつかの粒子径測定手法で使用される最も一般的な値は、D値です。これは累積分布に関連するもので、Dx のように数字が続いて初めて意味を持ちます。D値は、ふるい下とふるい上の両方を定義できます (累積曲線がふるい下とふるい上になるのと同様です)。特に明記されていない限り、標準はふるい下D値であり、一般的に Dx はこれよりも直径が小さい粒子が x パーセントある直径を示します。最もよく使用されるD値は D10、D50、D90 ですが(図2を参照)、特定の用途 (例: 静脈注射用インスリン) に合わせてD値をカスタマイズすることもできます。

D値は、その利便性と定義の分かりやすさから最も多く使用されるパラメーターですが、単一のパラメーターでありながら計算量の多い RR (Rosin-Rammler) 法や GGS (Gates-Gaudin-Schuchmann) 法に代わるものとして、通常は品質管理目的で使用します。

スパン

多くの場合、粒子径分布について有用な記述を行うためには、分布の形状を記述する方法も必要とされます。統計分布における重要な指標として、幅あるいは広がりがあります。レーザー回折・散乱法では、スパンという指標がよく使われます。一般的には以下の式で計算できます。

$$ Span = \frac{D_{90} - D_{10}}{D_{50}} $$

ただし、特定の用途に対して独自に定義されたスパンも存在します。 

Folk & Wardパラメーター

土壌サンプルや地質学サンプルなどは、多種多様な粒子径があり、粒子径に応じて分類されます。その粒子径分布は、多くの場合、非常に広く多峰性の複雑な分布です。このようなサンプルの分析のために、FolkとWard (F&W) が統計的粒子径分布解析法 [Ref: (R.L. Folk, 1957), AR: Soil] を提示しました。

この方法のポイントは、次式によって粒子径分布をミリメートルからファイスケールに変換することです。

$$ \phi = -\log_{2}d $$

続いて、一連のパラメーターの計算を行います。

  1. メディアン径 (中央径): 上記参照ファイ単位
  2. 平均径: 上記参照、ただしFolkは独自の式を提示 (R.L. Folk, 1957):
    $$ M_z = \frac{\phi_{16} + \phi_{50} + \phi_{84}}{3} $$ 平均径もファイ単位で表示され、すべてのパラメーターの中で最も広く使用されています。
  3. 歪度: 分布のピーク付近の非対称性を表す指標算出式:
    $$ sk_1 = \frac{\phi_{16} + \phi_{84} - 2\phi_{50}}{2(\phi_{84} - \phi_{16})} + \frac{\phi_{5} + \phi_{95}-2\phi_{50}}{2(\phi_{95}-\phi_{5})} $$ 歪度もファイ単位で表示します。歪度の計算方法は他にもあります。ただし、Folkが提示した式は分布の裾も考慮しています。完全に対称な分布の歪度は 0.00 です。正の歪みは小さい粒子の増加 (左の裾) を、負の歪みは大きい粒子へのシフト (右の裾) を表しています。Folkは分類方法も提示しました。
    1. ±0.1 はほぼ対称
    2. -0.10~-0.30 は粗い方への歪み、+0.1~+0.3 は細かい方への歪み
    3. -0.30~-1.00 は粗い方への大きな歪み、+0.3~+1.0 は細かい方への大きな歪み
  4. 尖度: 正規分布からのずれ、つまり "尖り具合" を表す指標Folkが提示した式:
    $$ k_g=\frac{\phi_{95} - \phi_{5}}{2.44(\phi_{75}-\phi_{25})} $$ 尖度もファイ単位で表示します。これは、サンプルに含まれる外れ値の数を判断するのにも使用できます。完全な正規分布は、尖度が 1.00 で、mesokurtic とも呼ばれます。分布のピークがより尖っている場合、つまり外れ値が少ない場合、尖度は 1.00 よりも高く、leptokurtic と呼ばれます。分布のピークがより平らな場合、つまりサンプルに多くの外れ値が存在する場合、尖度は 1.00 より小さくなります。このような分布は platykurtic と呼ばれます。

さらに、ファイ単位には、巨礫 (ϕ > -8) から粘土 (ϕ < 8) までの土壌分類について、粒子径区間を分かりやすく表せるという利点もあります。

結論

粒子径解析は、品質管理だけでなく研究開発にも便利なツールです。適切な重み付け基準やモード径などのパラメーターを慎重に選択することで、新製品の研究開発段階においても重要な情報が得られます。

特殊なサンプル群に関する情報はこちらをご覧ください。 

粒子径測定のためのレーザー回析・散乱法に関する詳細はこちら

参考文献

R.L. Folk, W. W. (1957). Brazos River Bar: A Study in the Significance of Grain Size Parameters. Journal of Sedimentary Petrology, Vol 27, No. 1, pp 3-36.